緑色が持つ「平和」とは、どのようにして考え出されるのか?

2016年10月のこと、人間国宝で文化功労者でもある志村ふくみさんの展覧会に行きました。志村さんは植物染料を使った染め物と機織りの第一人者で、展覧会では実際に染めた糸や着物が多く見ることが出来ました。

その中で最も印象的だったことは「緑」という色の難しさでした。

植物染料と聞けば多くの方は「草」や「葉」を思い浮かべるでしょう。どちらも緑であるケースが殆どです。しかし、1つの草や葉から美しい緑色を染め出すのは困難であると志村さんは綴っています。

確かに、藍(あい)の葉だけを使って染めたら深い青(藍色、紺色)になりますし、ヨモギの葉や茎だけで染めると褐色になります(淡い緑と言えるかも知れませんが、鮮やかさは欠けるでしょう)。

そこで志村さんは、複数の植物の力で美しい緑色を出しているとのことでした。確かに、緑色の作品には全て、複数の植物が使われている旨が紹介されていました。

さて、緑という色のイメージで「中立(バランス)」という言葉を思い浮かべる方があると思います。

緑そのものが中立でいる(バランスを取っている)ようにも思えますが、志村さんの考え方を照らし合わせると、複数のものが中立になった(バランスが取れた)結果で緑色が出来るのではないか?とも思えてきます。

緑には「平和」というイメージもあります。色の成り立ちを考えると、最初から平和だったと見ることも出来ますが、「困難を乗り越えて得られた平和」という考え方も出来るでしょう。

それ故に緑色に「難しい」という感覚があるのでしょう。しかし、その困難を乗り越えて理想かつ調和の取れた緑色が生まれると、人々を和ませ落ち着かせるものともなるように思えるのです。

志村さんは、ゲーテの色相環(しきそうかん)などに代表される「色彩学」も軸に置いて作品を展開されており、カラーセラピーに携わる者として学ぶべきことが多い展覧会でした。

90歳を過ぎても創作活動を続け、現在は娘の洋子さんと、孫(洋子さんの息子)の昌司さんとともに芸術学校「アルスシムラ」を開校し、その技術を伝える役目も果たしていらっしゃいます。

志村さん母娘のウェブサイト「しむらのいろ」は、色を多数扱う者でありながら、シンプルかつストレートに訴えかけるものがあり、こちらも学ぶべき点が多くあります。

技術だけにとどまらない世界観に圧倒されることは間違い無いでしょう。