「書く」ことを意識した印刷物と用紙の関係

あれは2017年頃だったと思います。ある方から宛名の入っていないポストカード(ハガキ)を預かり、宛名と差出人を書いてくださいと依頼されたことがありました。

「書いてください」ということなので、ペンで宛名を記入してくださいということだったと思うのですが、紙が滑らかで光沢も強かったため、手持ちのボールペンで普段通りに書くことは出来ませんでした。

筆圧を強めるなどして何とか書いたのですが、インクの乗りが非常に悪く、インクそのものがはじいたり、乾きが悪くてかすれたりしました。依頼者が特に気にする様子もなかったのが、ある意味で幸いでした。

その後、書き損じを用いて家庭用のインクジェットプリンタが使えるかどうか試しましたが、インクが上手く乗らず、字がかすれたのです。また、紙の滑りが良すぎて、ローラーが空走する事態にもなりました。

これだと、スタンプで差出人情報を表すのも苦労するに違いありません。また、ある方からは「万年筆でも上手く書けなかった」と聞きました。安全策は油性ペンか宛名シール(タックシール)だったのではないでしょうか。

印刷に使う用紙の種類は数多くありますが、やはり「適材適所」もあるものです。この時預かったポストカードは「コート紙」で作られていました。見た目は華やかでしたが、筆記性には乏しいものでした。

コート紙は印刷において定番かつ安価な用紙ですが「書くこと」を前提にする印刷物には向いていません。光沢を抑えた「マットコート紙」だと何とか上手くいくものの、安全策とまでは言い切れないように思います。

そうなると、最適なのは「上質紙」だと思います。上質紙は筆記性に優れ、筆記具を選びません。また、プリンタやスタンプにも対応します。

鮮やかさに欠くので写真印刷には向きませんが、近年は片面が上質紙で反対面がコート紙という用紙もあります。書く部分を片面のみと決めてしまえば、こういった用紙が大いに役立つでしょう。

ここまで、ポストカードを取り上げましたが、名刺やショップカード、チラシ(フライヤー)でも同様のことが言えます。名刺にちょっとメモ書きをしたり、ショップカードにスタンプを押したりすることはありますよね。

チラシでも、例えば申込用紙や応募用紙を兼ねたものであれば、コート紙を避けたいところです。書きづらい上に、郵送やFAX送信の際に文字がかすれてしまう危険性もありますね。

印刷物に「書く」という要素を加える際には、用紙を正しく選ぶことが大切です。それが相手への「気遣い」にもなるのです。