話題の「UD書体」は正しく使って初めて機能する その1

「UD書体(UDフォント、ユニバーサルデザインフォント)」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。「UD書体」とは、誰にでも見やすくて読み間違えにくい書体を指しています。

「数字の”3″と”8″の区別が付かない」「ひらがなの『ぼ』と『ぽ』が同じように見える」「細い線がかすれて読めない」などといった見づらさ・読みづらさを解消すべく作られた書体が「UD書体」とも言えるでしょう。

さて、近年は「UDデジタル教科書体」という書体が話題になっています。これは、人が鉛筆やペンで書く字をもとに作られた書体で、特に教育現場で採用する事例が全国各地で増えています。

試しに、今の元号「令和」で比べてみましょう。多くの書体では、上側の明朝体のように「令」の最後の画が縦棒になります。「和」の口の部分も縦棒が2本とも下に突き出しています。これもUD書体なのですが。

しかし、学校で上述のような書き方を学んだ方は居ないのではないでしょうか。「令」の最後の画は点です。「和」の口の部分も右側の縦棒が出ない代わりに下側の横棒が右側に突き出ます。

そのため、同じ「令和」であるはずなのに、違う文字と認識して混乱してしまう方もあるようです。確かに「同じ」と言い切るには難もあるように感じます。

そこで、下側のUDデジタル教科書体は、実際に正しく書いた文字をもとに、見て認識しやすく、間違えにくいものになっています。「はらい」や「はね」などにくせが無いというのも特徴的です。

弱視(ロービジョン)や読み書き障がい(ディスレクシア)がある方にも有効という研究や報告もあります。さらに、教育委員会がUDデジタル教科書体を導入し、管轄区域の公立学校全てで採用するケースもあるのです。

現状、Windows10のパソコンを使っている方は、UDデジタル教科書体が標準で使えるようになっています。それ以外のパソコンでは、フォントソフトから入手することになります。

ここまで読むと「なるほど、何でもUDデジタル教科書体で綴れば、読みやすくなるのね」と言いたくなりますが、気をつけなければならないことも幾つかあります。

改めて先の見本をご覧いただきたいのですが、上の「TB UD明朝 Std」にはM、「UDデジタル教科書体Pro」にはRとあります。MはMediumで、RはRegularを表します。

これらはいずれも書体の太さを表していますが、一般的にはRよりもMが太いとされています。しかし、見比べてみるとUDデジタル教科書体の方が太く見えますよね。

つまり、UDデジタル教科書体のRを他の書体のRと同じ感覚で使うと、字がつぶれて見えることがあるのです。余り小さな字で使うのは好まれません。

同様に行間を狭くしてしまうと、かえってうるさく感じてしまいます。書体そのものが行間を適切に取れるものならそれに従っても良いですが、そうでない場合は微調整が必要になります。

さらに、読みやすさを重視している分、文章すべてをこの書体にしてしまうと単調に見えてしまいます。同じ書体で文字の太さだけを変えても、メリハリに欠けてしまいます。

実際の教科書でもそうですが、見出しや強調させたい部分は違う書体を使った方が、UDデジタル教科書体の良さをより引き立てます。文字の色を変えるのもひとつの方法かも知れません。

見やすさ・読みやすさで選ばれるUD書体も、それを使えばオールOKという訳ではありません。使う際には、その良さを活かす「配慮」も必要になります。

さて、流穏の部屋でもUD書体を使った印刷物の依頼を受けたり、制作過程で私がUD書体を採用したりすることが増えました。しかし、今回とは違った「落とし穴」もあるように思います。

これにつきましては、次回「その2」と題して綴っていきます。